2024年10月6日

【コーヒーと水の関係】水の種類によってどのような味わいの変化が生まれるのか

  

「コーヒーって抽出する水で味が変わるの?」
「水道水じゃダメなの?」
「どんな水がコーヒーに適しているの?」

現役バリスタが、スーパーで売っている市販の水と水道水で味の違いについて調査しました!

この記事を読むと、コーヒーにはどんな水が適しているのかが分かります。

軟水硬水の定義

厚生労働省より軟水・硬水の定義は以下のようになっています。

通常、炭酸カルシウムの含有量が 60 mg/L 以下の水を軟水、60~120 mg/L の
水を中硬水、120~180 mg/L の水を硬水、180 mg/L 以上の水を超硬水としてい
る。

厚生労働省

一般的に言われている水の違いによる味への影響は?

一般的言われている水による味の違いについて、硬度による影響と、水に含まれている成分の影響を示します。

硬度の違いによる味の影響

軟水の特徴

・コーヒー豆そのものの味が引き出される

・スッキリとした味わいになる

硬水の特徴

・苦みが強くなる

・ボディが重たくなる

成分による違い

水が与えるコーヒーの味の影響については、Maxwell Colonna-Dashwoodさんらの論文によって、マグネシウムイオンとカルシウムイオンのバランスが大事であるということが示されています。

参考研究

If the motivation is to achieve the best balance of flavors for a given lighter roast coffee, then both Ca2+ and Mg2+ do a comparable job, Mg2+ having the added feature of preventing scale formation.

Hendon, Christopher H., Lesley Colonna-Dashwood, and Maxwell Colonna-Dashwood. “The role of dissolved cations in coffee extraction.” Journal of agricultural and food chemistry 62.21 (2014): 4947-4950.

参考動画

2014年のワールド・バリスタ・チャンピオンシップで、イギリス代表Maxwell Colonna-Dashwoodさんによって、水によるコーヒーの味の影響を説明するプレゼンテーションが行われました。

2014年のワールド・バリスタ・チャンピオンシップでのイギリス代表Maxwell Colonna-Dashwoodのプレゼンテーション

使用する水の紹介

今回は10種類の水を使用します。

それぞれの水のスペックは以下の通り

種類硬度 mg/L採水地成分(Ca)mg/100ml成分(Mg)mg/100mlPH
Contrex1468フランス46.87.457.4
evian304フランス82.67.2
のむシリカ130宮崎3.11.46.9
水道水677.3
富士山 蒼天の水56山梨1.40.537.6
CRYSTAL GEYSER38アメリカ0.640.54
TOPVALU 温泉水36栃木0.70.446.7
いろはす27山梨0.720.23
SUNTORY 天然水10~80長野0.1~2.40.02~1.17
温泉水1.7鹿児島0.050.019.5~9.9
水のスペック

水道水は、自治体が出している水の成分表をもとに記載してあります。

表は水の硬度の高い順に並べてあります。

調査方法

カッピングによる味の違いとtdsによる濃度測定を行います。

カッピング

KALDIで買ってきたブラジルの豆を使用し、カッピングを行いました。カッピングを行うことによって、抽出による味のぶれをなくし、水による味の違いを明確にするのが目的です。

コーヒー豆10gに対し、150mlの沸騰したお湯を加えます。

tds測定

tdsは総溶解固形分というものです。コーヒーの濃度を示す数値になります。得られたtdsから収率を計算することによって、水の違いよる濃度の違いを明らかにします。

収率は18~22%が適正とされています。

tdsを計る際にはDiFluidコーヒー tds濃度計を使用しました。調べた中で一番コスパが良かったのでこちらにしました!

常温程度まで冷めたコーヒーを測定します。

tdsの詳しい説明はこちら!

調査結果

カッピングによって得られた結果を、ボディ・苦み・酸味・甘みの4項目 ✖︎ 大・中・小の3項目で示します。

同様にtds測定によって得られた結果から収率を計算し示します。表は水の硬度が高い順に並べてあります。

種類ボディ苦み酸味甘みtds(%)抽出率(%)
Contrex1.3420.05
evian1.2218.34
のむシリカ1.3420.05
水道水1.3219.81
富士山 蒼天の水1.2819.2
CRYSTAL GEYSER1.4321.52
TOPVALU 温泉水1.4321.52
いろはす1.2118.1
サントリー天然水1.2218.34
温泉水1.4822.13
測定結果

分析

得られた結果を主に相関を用いて分析していきます。ボディ・苦み・酸味・甘みの項目で、大=2 中=1 小=0として計算しています。

ボディと硬度

ボディと硬度の相関を計算してみると、0.625となりました。この結果から水の硬度が高いほどボディが重くなり、硬度が低いほどボディが軽くなると言えそうです。これは一般的に言われている軟水はスッキリと、硬水はボディが重くなるとものに当てはまる結果となりました。

ボディと抽出率

ボディと抽出率の相関を見ると0.27となり、あまり相関が見られませんでした。この結果より、ボディが重いからといって抽出率が良いとは言えないということがわかりました。

苦みと硬度

苦みと硬度の相関は-0.23となりました。一般的に言われているような、硬度が高いほど苦くなるとは言えない結果となりました。

マグネシウムとカルシウムのバランス

Ca/Mgと酸味の相関を計算すると、-0.51となりました。この結果が示しているのは、Ca/Mgが小さくなるほど酸味が大きくなる。つまり、マグネシウムとカルシウムの量のバランスが取れているほど酸味が大きくなり、逆にバランスが崩れカルシウムイオンの量が増えるほど酸味は少なくなるということを意味しています。

それぞれの水の味わい

Contrex

超硬水いうこともあり、明らかに飲んでいてボディが重いというのがわかりました。飲み込んだ後に甘みが口の中に残りました。

evian

飲んだ中で一番甘みが強かったように思います。

のむシリカ

今回試した中で一番味わいのバランスが良かったように思えます。抽出率も20%ぴったりでした。

水道水

まあまあバランスは良かったですが、悪い意味で酸味が感じられました。

富士山 蒼天の水

かなりスッキリとしたコーヒーになっていました。浅煎りのコーヒーに合うと思いました。

CRYSTAL GEYSER

アメリカの水ですが、硬度は意外と低く軟水に分類されます。今回試した中で一番苦みが強かったように思えます。

TOPVALU 天然水

こちらも水道水と同じように酸味が強く感じられました。コーヒーには向いていないです。

いろはす

ほとんど酸味が感じられず、とてもスッキリしていた印象です。コーヒーに合う水だと思いました!

SUNTORY 天然水

こちらもスッキリでバランスの取れている水だと感じました。コーヒーに合う水だと思いました!

温泉水

硬度が1.7と一番低いのにも関わらず、苦みがかなり感じられました。PHが高いことが関係しているのでしょうか?

おすすめの水

今回の結果を踏まえ、最後におすすめの水をあげたいと思います。

バランス: 霧島天然水のむシリカ

スッキリ: サントリー 天然水い・ろ・は・す天然水

ボディ: Evian(エビアン)

苦み: クリスタルガイザー温泉水

何かご指摘などありましたらコメントお願い致します。